研究成果について

赤ちゃんの呼吸

赤ちゃんの呼吸イラスト1

赤ちゃんは、おなかの中で呼吸をしているの?

赤ちゃんは、お母さんのおなかの中にいるとき、大人と同じように空気をすったりはいたりする「呼吸」はしていないよ!赤ちゃんは、胎盤というところを通して、へその緒でお母さんの体とつながっているから、そのへその緒から必要な酸素を受け取り、不要な二酸化炭素をだしているんだよ。

イラスト2

わたし、羊水の中ではお魚さんみたいにエラ呼吸をしているんだと思ってた。(笑)

 ・・・。(苦笑)
実は、お母さんのおなかの中にいるとき、赤ちゃんの肺の中は羊水(肺水)で満たされていて、水浸しの状態なんだよ。でも、生まれてきた赤ちゃんはへその緒が切れてしまうから、肺で息をしないといけない。それには、肺の中から羊水がなくなってくれないと困る。羊水がなくなって空気が入れるようになれば、『オギャー』と泣き声をあげられるんだよ。

生まれて一番最初に赤ちゃんがすることは吸うことなんだね。
でも、赤ちゃんってすごいね!おなかの外に出て、瞬時に呼吸法を変えるなんて。

赤ちゃんが大きな産声をあげるのは、スムーズに肺で呼吸を始められたことの証(あかし)なのさ。でも、なかには産声をあげない赤ちゃんや、弱々しい産声の赤ちゃんもいて「新生児仮死」というとても危険な状態になり、すぐに適切な処理や治療が必要な場合もあるんだ。

でもSPring-8と赤ちゃんの呼吸が、どう関係しているの?

赤ちゃんイラスト肺の中の羊水を完全に取り除くことが出来ず、うまく呼吸が出来ずに命を落とすことを防ぐために、肺呼吸が始めるところを詳しく調べる必要があったんだ。そこで、SPring-8のX線を使った実験で、羊水がどのようにして空気と入れ替わるのか観察することにしたのさ。

一体どんな実験をしたの?

図1

生まれたばかりのウサギの赤ちゃんの胸にSPring-8のX線をあてて観察を開始したんだ!!
すると、羊水で満たされた肺は、赤ちゃんが息をしようとすると空気が入り込み、肺の中の羊水を肺の内部に押し込んでいたんだ。羊水は、肺の奥に追いやられ、息を吐き出すときでも、それが逆流しなかった。このことから羊水は肺胞という肺の一番奥から血液、リンパ管に吸収されていることがわかったのさ。

図2

呼吸前と呼吸後を比べると時間とともに白くなっているのがわかるね。
これが、空気が入った証拠なんだね。

図3 そうだね。未熟児や呼吸障害のある赤ちゃんは、肺の機能が未熟なために呼吸をしても十分な空気が肺に入らないことが多いんだ。そういう時には、人工呼吸をするんだけど、このような呼吸開始時の肺の様子がSPring-8で詳細に観察できたから、これからは単に肺に空気を出し入れするだけでなく、空気で羊水を押し込む人工呼吸法が使われていくんだろうね。


 

八木氏 高輝度光科学研究センター
コーディネーター 八木 直人

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カテゴリ生命科学・バイオテクノロジーシリーズ投稿日2014年5月12日 09:52