研究成果について

マイナス250℃でも凍らない水分子

マイナス250°Cでも凍らない水分子

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水は冷やすと0°Cで凍って氷になって、温めると100°Cで沸いて水蒸気になることは知っているよね(図1)。でも水をぐぐ~っと1億倍ほどに拡大してみると、どんな形をしているか知っているかい?


図1
図1

図2
図2

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毎日飲んでいるけど、知りません・・・・。


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水の分子は、プラスの電気を持った水素原子とマイナスの電気を持った酸素原子でできているんだ。プラスの電気とマイナスの電気は引き合うから、水分子どうしはこの静電気の力でくっつきやすいんだ(図2)。
この性質のせいで、水の中の水分子は、近くにある水分子と引き合いながら、ゆらゆらと動いているよ。ゆらゆら動いているから、水に静電気を加えると面白いことが起こるんだ。水道から流れ落ちる水に、こすって静電気を起こしたストローを近づけると、どうなるかな?


図3
図3

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水がまるで磁石に引き寄せられるように、流れるコースが曲がりました!(図3)


図4
図4

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ストローにプラスの電気がたまっていると、水分子の酸素原子がストローに引き寄せられ、ストローにマイナスの電気がたまっていると、水分子の水素原子がストローに引き寄せられるんだ(図4)。
つまり水分子は静電気に対してくるくると向きを変えてくっつこうとするんだよ。


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面白ーい!氷だとどうなるんですか?氷もこすったストローを近づけたらくっつくの??


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いいことに気付いたね。残念だけど、氷の中の水分子は、分子どうしの引き合う力のせいで分子の向きが決まっていて(図1、2)、自由には動けないんだ。
みんな冬になると、寒くてあまり動きたくないよね。水分子も一緒で、0°C以下になると、分子の動きが凍っちゃうんだ。だから氷は水みたいにはこすったストローにくっつかないよ。


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へえ、水の分子も寒がりなんですね。なにか着せてあげたらいいんじゃない?


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実はそれをやってみた人たちがいるんだ。京都大学の村田靖次郎教授は、水分子を、ダイヤモンドと同じ炭素でできたサッカーボール型の分子「フラーレン」の中に閉じ込めたんだよ。(図5)


図5
図5

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まるで、おもちゃで遊んでいるみたい。フラーレンの中の水分子はどうなっているんですか?


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名古屋市立大学の青柳忍准教授たちは、SPring-8のX線を使って、水分子を閉じ込めたフラーレンの結晶の中の、水分子の様子を調べたんだ(図6)。そうしたら、フラーレンに閉じ込められた水分子はマイナス250°Cでも凍らずに自由に向きを変えて動いていることがわかったんだ。


図6
図6. 水分子内包フラーレンH2O@C60の結晶構造(マイナス250°C)

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えっ?!、じゃあこすったストローにもくっつくの。


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そうなんだ、静電気を加えると、フラーレンの中の水分子がくるくると向きを変えるんだって。面白いね。


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いつも何気なく飲んでいる水に、こんな面白い性質があるとは知りませんでした。なにかに使えないの。


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水分子を閉じ込めたフラーレンは静電気に反応するから、電子部品などに使えるかも知れないね。それに地球上にたくさんある水と炭素だけでできているから、環境にもやさしいよ。


 

青柳准教授村田教授 (左)名古屋市立大学大学院
   システム自然科学研究科
    准教授 青柳 忍
(右)京都大学化学研究所
   構造有機化学研究領域
    教授 村田靖次郎

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プレスリリース本文

カテゴリ物質・材料科学シリーズ投稿日2014年2月18日 09:44