研究成果について

『身近なSPring-8 (3)   ~ダイハツ工業(株)・自動車触媒編~』

SPring-8に寄せられる質問で相変わらず多いのは、「SPring-8の成果は私達の生活にどう役立っているの??」という質問。今回は、SPring-8を活用して皆さんの近くに生まれた製品を紹介しようと思います。

『身近なSPring-8 ③ ~ダイハツ工業(株)・自動車触媒編~』

ミラ画像1 こんにちは。ボクは、ダイハツ工業さんから発売されている『ミラ』 です。

 『ミラ』って名前、聞いたことあるよ。ずいぶん前からあるクルマだよね? でもSPring-8とキミが、どう関係してるの?

 ダイハツ工業さんのエンジン関連技術にSPring-8が関係しているんだ。
 ダイハツ工業さんは、2000年をむかえて、自動車を取り巻く世界でも環境問題が大きく取り上げられるようになった頃に、環境にやさしい、画期的で新しい自動車触媒"インテリジェント触媒"を開発したんだよ。

 自動車触媒は、排気ガスをキレイにするために付けられているものだよね?
 その開発にSPring-8が関係するの?

 そう。インテリジェント触媒に新しく使われたのは『ぺロブスカイト型酸化物』というもの。この物質を使った触媒の、排気ガスをキレイにする機能が長持ちすることは、電子顕微鏡という装置で観察できていたんだけど、どうして長持ちするのかまでは判らなかった。

図1

 そこで、ダイハツ工業さんはSPring-8で実験をしてみたんだ。すると、『ぺロブスカイト型酸化物』に含まれる貴金属イオンが、繰り返し出入りする事によって、機能が長持ちしていることが判ったんだ。

図2

 原子の世界で何が起こっているのか、がSPring-8では見えてきたんだね!

 ダイハツ工業さんが、SPring-8でわかった結果とそれまでにわかっていた結果を併せて紹介したインテリジェント触媒は、2009年には512万台を越える車に使われるようになったんだ。皆さんが見て明らかに信用のおける素晴らしい自動車触媒と認められたんだね。
ミラ画像2 インテリジェント触媒の開発は、その後続々と発売される、環境にやさしい自動車の先がけになったと言ってもいいかもね。

 SPring-8での実験結果が無かったら『ミラ』くんのような、環境に優しい車はまだ販売されていなかったかもしれないんだなぁ。

カテゴリ産業シリーズ投稿日2011年11月 7日 09:51