研究成果について

体温をあげて細菌から身を守る仕組みがわかった (2012/5/9発表)

体温をあげて細菌から身を守る仕組みがわかった

イラスト1エイト君ママ:エイトが夜中、急に熱が出てびっくりしたのよ~。゚(゚´Д`゚)゚。

ヒカリちゃんママ:もう大丈夫なの?

エイト君ママ:ありがとう、もう大丈夫よ‼

ヒカリちゃんママ:風邪やインフルエンザなどのバイ菌に感染して体温が37°Cまで上がると、しんどいけど熱が出ることで、血液の中でバイ菌をやつける物質が作られ、病気を治そうとがんばってくれる働きが体内にあるんだってよ。大阪大学の岡村先生と藤原先生※1らの研究グループが世界で初めて発見したんだって。

エイト君ママ:すごいね~(*^。^*)

イラスト2ヒカリちゃんママ:これまで熱が出て病気が治る詳しいメカニズムは分かっていなかったんだけど、スプリング8(エイト)の強力なX線を使って体内に入ったバイ菌をやつける時に武器となる活性酸素を効率よく作り続けるための、白血球の一種(好中球)の仕組みを調べたところ、分かったの。

エイト君ママ:どんなことが、分かったの?

図1ヒカリちゃんママ:じゃ、バイ菌をやつける仕組みを絵で説明するね。バイ菌が体内に侵入したよ。大変!

エイト君ママ:そうすると、どうなるの?

ヒカリちゃんママ:バイ菌をやつける力を持っている好中球(白血球の一種)がバイ菌をパクっと食べるの。

エイト君ママ:食べられたバイ菌はすぐに死んじゃうの?

ヒカリちゃんママ:そんなに簡単じゃないわ。好中球(1)がその中から「水素イオンチャンネル(2)」と名付けられた道を通してバイ菌(3)を捕まえた部屋に向かって水素イオン(4)を放出するのね。そうすると、この水素イオンをもとに殺菌力の強い活性酸素が作られるの。これが、バイ菌をやつけるのよ。

エイト君ママ:へえええ‼

ヒカリちゃんママ:だけど「水素イオンチャンネル(2)」は平熱だと閉じたままなの。体温37°Cになると水素イオン(4)の通り道は少しずつ開き始め、40°Cで全開になり、熱が下がると通り道はまたふさがるの。この通り道の開け閉めは水素イオンチャンネル2つが1セットとなることで初めて機能しているの。岡村先生と藤原先生はこの水素イオンチャンネル(2)の仕組みを明らかにされたのよ。
こうして、バイ菌の退治が完了するのね‼

図2

エイト君ママ:なるほど、よくわかったわ!

ヒカリちゃんママ:バイ菌をやつける仕組みが体温37°Cで働き始めるとわかったのは世界で初めてで、体温が上がるのが遅く、病気が進行しやすい高齢者などの重症化を防ぐ新たな治療薬の開発につながると期待されているのよ。

 

※1) 大阪大学大学院 医学系研究科 生理学講座(統合生理学)
    教授   岡村 康司
    准教授  藤原 祐一郎

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プレスリリース本文 | SPring-8NEWS 67号(2013.3月発行)

カテゴリ生命科学・バイオテクノロジーシリーズ投稿日2013年6月18日 15:33